標準地域メッシュ・システム
地図を扱うシステムにおいて度々登場する地域メッシュ。そのコードや名称に疑問を持つ方も多いのではないでしょうか? 今回、いろいろと調べてみて分かったことをまとめました。
標準地域メッシュ・システム
日本全国を格子状の区画(メッシュ)にわけて、それぞれに一意なコード(メッシュコード)を振って区別する仕組みがあります。
http://www.stat.go.jp/data/mesh/gaiyou.htm
元々は国土がどのような用途で使われているかの統計データの単位として使うために作られたもののようです。
政府のデータがこのメッシュの単位で定義されていることが多いため、それらを利用するためには必然的にこれを理解する必要があります。(たとえば「アメダスのメッシュデータ」とか。) 政府そのものが出すデータではなくても、それと親和性の高いデータはやはりこのメッシュが使われていたりします。
基準地域メッシュは3段階で計算されます。
一次メッシュ
一次メッシュは4桁のコードで表されます。 先頭2桁が緯度から計算され、残り2桁が経度から計算されます。 ここでいう「緯度/経度」は平成14年を境に測地系自体が変化している(※「補足:測地系について」参照)ので、それ以前の情報と混合する際には変換が必要になります。 (一次メッシュのレベルでは殆ど差異がありませんが、この先もっと細かいメッシュでは差が大きくなります)
- 緯度(北緯)×1.5(小数点以下切り捨て)
- 経度(東経)-100(小数点以下切り捨て)
絵にするとこんな感じです。
- 最南:沖ノ鳥島 → 3036
- 最北:弁天島 → 6841 または択捉島 6848
- 最西:与那国島 → 3622
- 最東:南鳥島 → 3653
というわけで、日本の国土が 3022~6853 の範囲に入ります。
北緯を1.5倍するのは、日本の位置する中緯度(40度前後)における東西方向の地球円周が緯度方向の円周と比べて小さくなっているのを、比較的単純な方法で近づけることができるから(そして常に2桁の範囲に収められる)。
コードの算出方法からわかるように、日本の国土を固定長で表せるように特化しているので、外国では使えません。(グローバルなサービスでは使えません)
メッシュの1区画はおおよそ80km四方です。この「おおよそ」というのはかなりアバウトな指標であって、実際には南北方向は1割近く短く、東西方向は1割以上長い、つまり南北と東西では2割以上の差がある長方形です。この比は南方のメッシュほど激しくなります。
たとえば、弊社・横浜本社のある、みなとみらいセンタービルの属する一次メッシュのメッシュコードは「5339」です。これは東京都のほぼ全域(離島及び奥多摩の奥の奥を除く)と神奈川県の大部分(三浦半島や小田原市、相模湾沿岸を除く)が入った、おそらく一番人口の多いメッシュです。
二次メッシュ
二次メッシュは、一次メッシュの1区画を、東西南北それぞれ8等分して64分割したものです。 以下の図のように南西の角を始点に00~77の2桁(それぞれの桁は緯度方向/経度方向の0始まりの連番)を、一次メッシュのコードの後ろに続けます。(計6桁)
一次メッシュがおおよそ80km四方だったので、二次メッシュはおおよそ10km四方です。
たとえば、みなとみらいセンタービルの属する二次メッシュのメッシュコードは「5339-15」です。 みなとみらい地区全体の他、横浜市中区の大部分、神奈川区の東半分、鶴見区の沿岸地域、川崎区もちょっと、同じメッシュに入ります。 コード中のハイフンは分かりやすさのために入れていますが、ISBNなどと同様、データとしてもらう場合は入ってないことが多いと思います。
三次メッシュ = 基準地域メッシュ
三次メッシュは、二次メッシュを更に、今度は東西南北10等分します。00~99の2桁で表せるのでこれをまたコードに追加します。
これで、コードは計8桁。各区画はおおよそ1km四方ということになります。 三次メッシュとも言いますが、これが「基準」という扱いになります。
たとえば、みなとみらいセンタービルの属する基準地域メッシュのメッシュコードは「5339-15-40」です。 末尾の0が示すのは、二次メッシュの「5339-15」の中では最も西寄りの部分に属していた、ということです。 北東はインターコンチネンタルホテル(半月形のホテル)から、南西は当社が毎年新年のご祈祷でお世話になる伊勢山皇大神宮あたりまでが同じメッシュです。
分かりやすい地図サイトがあったのでご紹介します。
http://minorua.github.io/gmaps/mesh/#5339-15-40
分割地域メッシュ:1/2地域メッシュ、1/4地域メッシュ、1/8地域メッシュ
基準地域メッシュを 東西南北2等分して4分割し、以下のように振られた1~4の1桁を追加すると 1/2地域メッシュになります。コードは計9桁になります。
せめて 0~3(2進数的に表せば00~11)だったりすると少し幸せだった気がするのですが、こういう振られ方をしてしまいました。
そして、1/2地域メッシュを更に同じ方式で4分割すると 1/4地域メッシュ(コードは10桁)、それを更に4等分で1/8地域メッシュ(コードは11桁)です。 それぞれおおよそ500m四方、おおよそ250m四方、おおよそ125m四方ということになります。
たとえば、みなとみらいセンタービルの属する1/8地域メッシュのメッシュコードは「5339-15-40-4-3-4」あたりです。ちょっと「5339-15-40-4-3-3」にもかかってるかもしれません、特にアットウェアのオフィスは西側の角なので(4が北東、3が北西)。
統合地域メッシュ:2倍地域メッシュ、5倍地域メッシュ、10倍地域メッシュ
基準地域メッシュから見て、今度は大きくなります。 とは言いつつも、実際には基準地域メッシュからではなく二次メッシュを、三次メッシュに進むときと違う分割サイズで分割することになります。
二次メッシュを東西南北10等分で三次メッシュだったので、2倍は東西南北5等分、5倍は東西南北2等分、10倍は・・・二次メッシュそのものです。(必要性が不明ですが)
2倍メッシュは非常にややこしく、基準地域メッシュ同等の10分割をしたうえで、奇数の場合は1引いて偶数にするという分割です。
しかも、この方法だとそのままでは基準地域メッシュのコード体系と被る(基準地域メッシュでたまたま偶数コードだったのか、2倍メッシュだから偶数なのか区別できない)ということで、さらに末尾に固定で「5」を追加します。 6桁+2桁+1桁の9桁。今度は1/2メッシュと同じ桁数ですが、1/2メッシュの9桁目は1~4しか入らないはずなので区別できます(苦肉の策?)。基準地域メッシュより粗いのに、コードは長くなってます。おおよそ2km四方になります。
5倍メッシュは分割地域と同じルールで二次メッシュを分割して1〜4の1桁を追加するので二次メッシュの6桁+1桁の7桁です。おおよそ5km四方。
2倍メッシュから5倍メッシュに変換しようとすると、真ん中の「44」は5倍メッシュの「1~4」それぞれに分割吸収されるというイレギュラーケースが発生。。。4XやX4も2つに割られます。2倍と5倍は親子関係がありません。
10倍は・・・何も足さない。何も引かない。二次メッシュのコードそのままです。単なる二次メッシュの別名と考えられます。
細分メッシュ
標準地域メッシュ・システムには直接は含まれませんが、派生したメッシュです。 「国土交通省 国土数値情報」として出してます。(標準地域メッシュ・システム自体は「国土地理院 基盤地図情報」) 土地利用細分メッシュとか1/10細分区画とかとも言います。おおよそ100m四方なので100mメッシュとも言われます。
1/2地域メッシュ、1/4地域メッシュ、1/8地域メッシュの効率の悪い(※個人的感想です)細分化を無視して、基準地域メッシュを改めて東西南北10等分します。二次メッシュから三次メッシュへの分割と同じです。
基準地域メッシュの8桁に00~99の2桁を追加するので計10桁です。
1/4地域メッシュと同じ桁数かつ、コード値の範囲も重複しており、ハイフンを入れていれば区別はできますが・・・そうでなければコード値自体からは区別不能です。(下2桁に0や5以上の数字が入っていれば確実に細分メッシュだとわかりますが。)
また、2倍メッシュと5倍メッシュの関係以上に、細分メッシュと1/4・1/8地域メッシュとの変換は醜いものとなるでしょう。。。
その他のメッシュ
時代が進んでどんどん精密な分割が必要になったためか、10mメッシュ5mメッシュといったメッシュもあるようです。 コード体系は確認していませんが、たぶん細分メッシュを更に東西南北10等分→さらに東西南北2等分なので、それに沿ったコード体系だろうと思います。
以上、地域メッシュに関する説明でした。複雑なルールの理解の一助になればと思います。
補足:測地系について
測地系(≒座標系+楕円体の定義)によって同じ緯度経度でも差が生まれます。 現在地(GPS)の緯度経度⇔地図⇔施設情報の緯度経度 の3者の測位系の互換に注意する必要があります。
日本測地系
明治初期から平成14年3月まで使われていた。 地球を「ベッセル楕円体」という回転楕円体に見立てて測定する。 ベッセル楕円体は特にユーラシア大陸において良い精度の出るモデルだったので、ヨーロッパ・アジアで良く採用された。(ユーラシア大陸での精度を優先して実際の地球とのズレがソコソコあることに目をつぶった?) ゆえにアメリカで発展したGPSによる測地に使われる系(後述)とは差が大きく、相互の利用には補正が必要になる。 英語で呼ぶときは「Tokyo Datum」、コードは「TOKYO」とか「TKY」とか。(日本と名付きながらTOKYO)
世界測地系
名前から「世界標準」と勘違いしそうになるが、「世界標準的なものと互換の高い、日本における測地ルール」を日本の法律でそう呼んでいる。 (業界的には、同じく世界標準的なものと互換性の高い諸外国の測地ルールのことも世界測地系と呼んだりする模様だが、ここでは「日本における」ものを指すこととする) 英語では「Japanese Geodetic Datum」と呼ぶ。(世界と名付きながらJapan) 地球の形の扱いが Geodetic Reference System 1980(GRS80)という定義(定数群)の中で定められた楕円体に変更された。 加えて、原点や緯度経度の定義もITRF座標系という定義を使うようになった。
JGD2000とJGD2011があり、JGD2011は東日本大震災における東日本付近の地殻変動を加味したものになる。これは、モデルが変わったのではなく地面のほうが動いたのであって、
- JGD2000:「大震災 前 に作った地図、大震災 前 に取得した位置情報」
- JGD2011:「大震災 後 に作った地図、大震災 後 に取得した位置情報」
という意味合いの違いである。 東日本大震災以外の地殻変動も含め、国土地理院の PatchJGD で地殻変動前後の位置関係の変換を行うことができる。 ITRF自体も何度か改訂されているがパラメータの細かな調整であり、一般人レベルでは殆ど気にしなくて良さそうだ。
World Geodetic System 1984(WGS84)
アメリカにおける標準、GPSでの測地に用いられる系。 座標系の定義も楕円体の定義も、世界測地系で使われるITRF/GRS80と微妙に違うものの、基本的な構造は同じであり、計算結果もミリやセンチレベルの誤差しかないので一般に利用する地図アプリ程度であれば相互の利用に支障はない。 1984以降に何度か改訂が入っているが名称は変わらない。改訂のたびに ITRF/GRS80 とパラメータが近づいて差が小さくなってきているらしい。
余談
昔、地図がらみの機能を作るときにはこの「測地系の違い」でずいぶん面倒なイメージがありましたが、今どきのデータは基本的には世界測地系なので、よほど古いデータを引っ張ってこない限りは気にしなくてよさそうです。 一方で、大震災により測地系ではなく地面そのものが変化してしまったというのが衝撃的ですね。